出稽古における心構え

テコンドーの稽古は、日々自分の道場で積み重ねることが基本です。しかし、ときに外の道場に足を運ぶ「出稽古(でげいこ)」は、非日常の中で稽古をする貴重な機会となります。いつもと違う環境に身を置くことで、新たな刺激を受け、技術面・精神面の双方で大きな成長につながることがあります。また、同じテコンドーを学ぶ仲間との新しい出会いも得られるでしょう。
ただし、普段と異なる環境だからこそ、気を付けるべきことも多くあります。
今回紹介する内容を心に留め、有意義な出稽古の場としましょう。

出稽古とは

出稽古とは、自分の所属する道場等を離れて他の道場や稽古場に赴き、稽古をすることを指します。
主な目的は、普段とは異なる相手や指導者と手合わせをすることで、技術の向上や精神の鍛錬、試合対策、交流などを図ることにあります。

ただし、出稽古は「やりたい」と思ったらすぐに実現できるものではありません。
きっかけはさまざまですが、多くの場合、所属する道場の先生や、相手先の道場に所属する知人を通じて依頼するか、親交のある道場から招待を受けて実現します。
いずれの場合も、所属道場の先生から許可を得ることが必須です。

出稽古に行く前に知っておきたいこと

出稽古は、相手の道場という「他人の家」にお邪魔する行為です。
そのため、厳格な礼儀作法が求められます。これは、相手先に依頼して行く場合も、招待を受けて行く場合も同様です。
どのような立場で参加する場合であっても、「自分は部外者である」という意識を持ち、感謝と敬意を忘れず、謙虚な姿勢を貫くことが何より大切です。
また、出稽古に行くということは、自分自身だけでなく所属道場の顔として見られるということも忘れてはなりません。
お互いが気持ちよく稽古を行い、道場同士が良好な関係を築き続けるためにも、次の基本的な心得を大切にしましょう。

出稽古で大切にしたい10の心得

・目的意識を持って臨む
・遅刻しない・早退しない
・級段の上下に関わらずしっかりと挨拶をする
・身だしなみを整える
・指導者の指示には素直に従う
・求められた稽古内容は断らない
・真摯な態度で稽古に臨む
・怪我をさせない・しないよう注意する
・技術的な指摘は控え、謙虚な姿勢を貫く
・稽古が終わったら感謝を伝える

やむを得ない事情がある場合を除き、これらはすべて守るべき基本です。
出稽古で技術を磨くことも大切ですが、それ以前に、マナーを守り、礼を尽くすことが大前提です。

受け入れる側の心得

自身が出向くこともあれば、所属する道場が受け入れる立場になることもあります。出稽古は、受け入れる側の姿勢によっても、その価値が大きく変わります。温かく迎えることで、出稽古に来た稽古生の緊張が和らぎ、互いに充実した稽古時間を過ごすことができます。
・稽古前にきちんと挨拶を交わし、道場のルールや注意事項を伝える
・様々な稽古生と交流できる雰囲気をつくる
・技術的なアドバイスをする際は、相手の先生の指導を否定しない
・稽古後には労いの言葉をかける

このような積み重ねが、道場同士の信頼関係を育み、テコンドーの世界全体をより良いものに導きます。

出稽古で得られる経験と学び

山上先生自身も、国内外の様々な道場で出稽古を経験してきました。国内の道場では、先生や稽古生から多くの学びと刺激を受け、印象に残る出会いが数多くあったといいます。海外では、言葉が通じなくてもテコンドーという共通言語によって心が通じ合い、笑顔と集中のなかで充実した時間を共有できたそうです。
出稽古は、自分の技術を磨く場であると同時に、「人としての在り方」が問われる場でもあります。普段の稽古以上に礼儀と心得を意識し、学びを最大限に活かしましょう。

まとめ:出稽古を「成長のチャンス」に

出稽古は、自分の実力を試すだけでなく、他者から学び、自分の世界を広げるための大切な機会です。環境が変わることで、普段の稽古では得られない気づきや成長が生まれます。
「テコンドー精神」は、国内外どこの道場でも共通です。どこで学ぶときも、謙虚さと感謝の心を忘れず、真摯に学びましょう。
その一つひとつの経験が、きっとあなたのテコンドー人生をより豊かにしてくれるはずです。