ITFのロゴに込められた意味

ITF(国際テコンドー連盟)のロゴは、1965年にテコンドー創始者・崔泓熙(チェ・ホンヒ)総裁によってデザイン・承認されました。
このロゴには、ITFが大切にする価値観や理念が凝縮されています。
創始者が思い描いた哲学、伝統、そして理想が、どのようにこのシンボルに込められているのか、ひとつひとつ見ていきましょう。

拳 ― 創始者の志と武の象徴

ロゴの中央に大きく描かれている拳は、崔泓熙将軍の拳を象徴しています。
これは、肉体的な力を超えた、知恵の力を表しています。物質的、政治的な力とは異なり、知恵は一度得られれば失うことはなく、生涯にわたって私たちの行動、言葉、思考を導いてくれます。
また、拳は規律、正義、自己制御、道徳的な強さといった、すべてのテコンドー修練者が追求すべき価値観が込められています。

地球儀 ― 世界に広がる理念

拳の背景には、経度・緯度線が描かれた地球儀があります。
これは、テコンドーを普及させ、世界中の人々を結びつけるという、ITFの価値観と使命を象徴しています。
実際、テコンドーは今や五大陸に広がり、国籍・文化・言語を超えて共通の価値を育む武道として、多くの人々に親しまれています。

陰陽 ― 対立を超えた調和の哲学

ロゴには、陰と陽を表す「太極図」が隠されています。
これは東洋思想に基づく陰陽の概念で、自然界において一見相反する力が、実は調和とバランスによって共存していることを示しています。
テコンドーにおいても、「心」と「身体」、「柔」と「剛」など、対極に見える要素が一つの流れの中で調和しています。

色彩の意味 ― 志を映す4つの色
  • 黄:拳や「태권(テコン)」の文字に使われる黄は、大地を象徴する色です。すべての成長の土台となる力を表し、初心者が基礎を学び、やがて力強く成長していく「始まりの段階」の重要性を示しています。
  • 青:ロゴの背景色である青は、空や海のような広大さ、深遠さを象徴しています。これは、テコンドーが、人間的な成長、精神的な成長をもたらす広大な可能性と一致しています。青はまた、人間の限界を超え、更なる高みに到達しようとする志を表しています。身体的な強さだけでなく道徳的・精神的な成長も追求する、テコンドーの包括的な目標を反映しています。
  • 黒:外周に使われている黒は、黒帯の色としておなじみですが、単に技術の高さを示すだけではありません。成熟・熟達・深い理解、すなわち何年にもわたるの鍛錬や忍耐を通じて鍛え上げられた知識の集大成を意味しています。また、黒は修練の終わりではなく、より高い学びの始まりであるという、テコンドーの奥深い世界観を表しています。
  • 白:ロゴの背景に使われる白は、純潔、無垢、新たな始まりを象徴します。韓国文化とテコンドーの伝統において、白は初心者の色であり、知識を吸収する準備ができた真っ白なキャンバスを象徴しています。これは、学習のどの段階においても、謙虚さ、誠実さ、そして開かれた心で臨むよう促すものです。

1965年に生まれたITFのロゴは、半世紀以上にわたり受け継がれてきました。
そこには、創始者が残した理念やテコンドーの価値観が刻まれています。
私たちが稽古を重ねるとき、このロゴは常にその理念・価値観を思い出させ、進むべき道を示してくれる存在なのです。